カリフォルニア州 デービス 3 1994

リガーの仕事の70~80%位を占めるのがリパック作業である。スカイダイビングで使用するパラシュート(パラシュートとは装備全体を指し、開く傘の部分はキャノピーと呼ぶ)にはメインとリザーブ(予備・非常用)の2つのキャノピーがパックされて(たたまれて)入っている。メインキャノピーを普通使うわけだが、万一メインが正常に開かない場合リザーブキャノピーを使って降下する。
メインキャノピーはジャンパーが自分でパックするが、リザーブキャノピーはリガーがパックしなくてはならない。より安全性を高めるためである。また、リザーブキャノピーは180日ごとにリパック(広げて点検し、たたみ直す)しなくてはならない。
リガーの試験を受ける前にリガー資格者にスーパーバイズ(監督)してもらいながら20個リパック作業をしておく必要がある。それは監督者の署名とともにパックデータブックに記録される。
また「この者は確かに20個練習した」という証明書類をリガーに作成してもらう。
シニアリガーの試験は、筆記、口頭試問、実技の3つ。
デービスについた翌日にサクラメントにあるFAAの試験センターに筆記試験を受験しに行った。
ここでまずパックデータブックと証明書類を係員に提出し確認してもらう。係員はそれを見つつ、たとえば「このリザーブキャノピーはこちらのリザーブキャノピーとどういう違いがあるのか?」などということをこちらにいくつか質問してくる。そう、リガー資格を取るためには英語を理解出来なくてはならないという前提条件があるのだ。「こいつは話せるのか英語を?」と疑わしそうな目を向けてくるオジサンの質問を冷や汗ものでなんとかかわし試験を受けることが出来た。
筆記試験は3択問題が50問出て70点(70%)以上の正解率で合格。試験はPC上で受ける。部屋の周囲にずらりとPCが並んでいて様々な試験を受験者が同時に受けられるようになっていた。回答はマウスで選択するようになっていた。1994年だからOSはWindows3.1か、問題はキャラクター主体だからDOSベースだったかもしれない。
回答し終わり全体を見直した後「これで終了」をクリックすると「本当にいいのか」と確か2回ほど念を押され「OK」と答えるとその瞬間、画面に点数が出た(笑)。80数点くらいだったかな。
この数年後、別の人間がリガー試験を受けに行く時、東京にもFAAの試験センターがあることが分かった。結局リガーの筆記試験はそこでは受けられなかったのだが、パイロットや整備士など日本にもかなり受験生がいたためと思われた。ところが911以降、アメリカ国外の試験センターはほぼ無くなってしまい、日本では沖縄の基地内にしかない。テロリストがパイロットのトレーニングをしていたことに関係しているのだろう。
サクラメントにはスタッフ(バイト?)のイギリスから来ていた20代のオニイちゃんに車に乗せていってもらった。大きな街路樹が立ち並ぶ瀟洒な住宅地を走っていて、ふと気がつくと建ち並ぶ家々が小さくなっている。置いてあるクルマも10年以上昔のおんぼろ日本車だ。そう、ブロックでがらりと雰囲気と住民層が変わったのである。

このオニイちゃん「えっ?」とか「なに?」とか人に聞き返す時ぶっきらぼうに「Sorry!」と言っていたのが印象的だった。

この後ActionAirのロフトでハーネス用の大型ミシン操作とか、キャノピー修理など練習の日々。時間があればジャンプもするつもりで自分のパラシュートを持って行っていたのだが予定していた日は雨。結局別な日に1回だけジャンプすることが出来た。「これならわざわざ日本から持ってこなくても貸してあげたのに」とレイに言われた。。。ごもっとも!

2011年4月11日

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