「LMD-649の製作」を載せてから15年も経過してしまったが制御の中心であるコントロールユニット(ロジック)について少し詳しく書いておこうと思う。雑誌「ロッキンf」 1982年3月号の記事中この図のオレンジ色の部分であり、
記事中の以下の画像でカードスロットから抜かれて本体ケースの上に置かれたボード(オレンジ色)がそれである。
ボードは2枚重ねで固定されており、おそらく1枚では回路が入りきらず44ピンのバスに含まれない接続が必要でこの形になったのだろう。ボードに接続されているフラットケーブルは操作パネルのスイッチ類と7セグLEDに繋がっている。
ボードはエブレン製のラッピング用ユニバーサルボードである。当時自作ボードはラッピング配線をしていた。ラッピング配線をする場合、IC取付側表面にあらかじめラッピングピンが立っているエブレン製ボードを使うか、通常のユニバーサルボードにラッピング用ICソケットを取り付けボード裏面でラッピング配線をするかのどちらかだった。表面で配線すればピン番号が分かりやすく、裏面で配線すればICをよけることなく直線最短距離で配線できた。
このボードの資料がないか「◎マイコンピューターをつくろう SC/MPによるマイコン入門」が載っている1978年1月号のトランジスタ技術を探したら広告が載っていた。LMD-649に使用していたのはこのE-PACSⅡである。ボードサイズから推測するとMODEL420/HC28Eで当時¥4,000!仕事だから使えたがアマチュアが趣味で使える値段ではなかったようだ。
このころはAC電源のトルクのあるラッピングツールを使っていたが、ラッピング用ビットは確か3段階にわたって進化したと記憶している。1.最初は線材のラッピングに必要な長さ分の被覆をストリッパーで剥きビットに差し込んでラッピング、2.次にCSMW(Cut&Strip Modified Wire Wrap)用ビットとCSMW用線材を使い被覆のままビットに差し込みラッピングすると巻き付く部分だけビットが自動で被覆を剥いてくれる様になり(ジュンフロンETFE電線!思い出した)、3.最後はまた線材の被覆が変わり被覆のまま巻き付けるとラッピングピンの角の部分だけ被覆が裂けて導通する、だと思っていたのだが・・・3が検索で出なかったので同じく上記のトラ技を探したらこんな広告があった。
ポストに線材を巻き付けるときにポスト面内側の被覆を裂きながら巻き付けるアイデア。まず手巻きはしなかったのとこれ専用の電動工具や線材を使った記憶が無いので、自分では使っていなかったようだ。このSLIT WRAPが自分が記憶していたつもりの3に該当するかは分からない。
「ロッキンf」 1982年3月号の別なページの以下の画像だとボードは8枚挿さっており、フラットケーブルコネクタのあるコントロールユニット以外にも右から3枚目と左から2枚目がラッピング基板のようだが何だったか忘れている。確かなのは右端のカード抜き取りレバーの付いている基板2枚はメモリボード、1枚飛んでフラットケーブルコネクタのある基板2枚がコントロールユニット、その左の四角いパーツが載っている基板がA/D,D/A基板なことだ。
上記のトラ技にこんな広告もあった。LMD-649に使用したデジタルスイッチである。1桁単位で必要な桁数分スイッチ同士をパチンパチンとはめ込んでいき、仕上げに左右のエプロン部分を取り付けて完成。
次にコントロールユニットの実際の回路構成や信号のタイミングについて述べたい。コントロールユニットは74LSTTLで組まれており基本は以下の図のプリセットカウンタ(加算器)とコンパレーター(比較器)である。図は簡素化されており実際は複数のロジックICが必要となる。
まず音をサンプリング(録音)する時はカウンタクリアでアドレスを0にし次にカウンタクロックでアドレスを1つずつ増やしながら入力されたA/Dからのデータをメモリに書き込み、コンパレーターは無視しカウンタのキャリーアウト(アドレスがFFFFHすなわち最終アドレス)でカウンタとメモリ書き込みを止める。
音源を再生するときはカウンタセットでスタートアドレスを16進デジタルスイッチから読み込みセットしそのアドレスからカウンタクロックでアドレスを1つずつ増やしながらメモリ上のデータをD/Aに渡して音を出力し、16進デジタルスイッチのエンドアドレスとコンパレーターで比較しつつ一致出力が出たらカウンタとD/A出力を止める。
以上の動作をロジックのタイミングで見たのが以下の図である。
LMD-649はこの1台しか製作されず終わったのだが、もし改良するチャンスがあったらどうしていたか? 当時も少し考えたが音源の始点終点の指定が16進デジタルスイッチ、表示が16進7セグLEDというのは原理的過ぎる。そこでスイッチをロータリーエンコーダー(インクリメンタルエンコーダー)にし表示は16進から10進に変換して表示することにして、始点と終点の2つの円形ダイヤルをグルグル回すことで前後させればより使いやすくはなったろう。以下のようなイメージだ。
それと「逆転再生」スイッチの追加。これはカウンタ周りの回路変更が必要となる。プリセット可能なアップダウンカウンタを使用しかつスタート/エンドアドレスを逆にセットしなければならない。
また全くの他力本願だがメモリは16ビット分積んでいたので、もし14ビットや16ビットのA/D,D/A入出力基板が出来ればすぐに挿し代えて使えただろう。
とはいえ改良となれば当然音源・始終点のセーブ、ロードは必須となったであろうし音源の波形も見てみたい。それだったらこの後製作することになるLINDAシステムのようにPCに繋げるか、いっそPC-9801に挿すボードにしてしまう(オレンジがそうなったように)という方向だっただろうか。いずれにせよサンプラー製品(サンプリングキーボード)がどんどん出てきてしまうのだからわずかな期間しか優位に立てなかったろう。
LMD-649は歴史に埋もれて忘れ去られていても不思議でなく、偶然のタイミングでYMOのアルバムに使用されその経緯と音が残ったのは幸運だったとしか言いようがない。